不適合者のジャンクヤード

腑に落ちるか落ちないか、読む人次第。拾い物があればご自由に。

創作世界のオッズ

小説とか、なんでもいい、架空世界の舞台。

闘技場とか、競馬とか。

ギャンブルが登場することってありますよね。

 

「主人公の勝利が8.5倍。

 ライバルAの勝利が1.2倍。

 引き分けが12倍となっています」

 

例えばこんな描写があったとする。

多分作者は、ギャンブルの仕組みをわかっていない。

というか

パリミュチュエル方式 - Wikipedia

ブックメーカー方式 - Wikipedia

二つの違いもどうだっていい。

 

俺たちは雰囲気で小説を書いている。

ってな勢いがないと小説なんて書けないからな。

 

オッズの計算はそんな難しくない。

起こりうる事象A,B,C...の支配率と胴元のもうけの合計を100%にする。

ここでの支配率、ってのは投票した発券枚数が、全体の何割を占めているかってのを指す。

 

例に出した文で考えてみる。

まずは投票率(起きそうな確率に賭けられた割合)を適当決めてみよう。

 

  • 主人公が勝つ 35%
  • ライバルが勝つ 60%
  • 引き分け 5%

 

主催者(胴元の取り分) 10%

 

こういう場合で計算をしてみよう。

 

 

全体に賭けられた掛け金から、胴元の取り分を差し引くと90%になる。

主人公が勝つケース  (賭け金90%)0.9 ÷ 0.35(支配率35%)=2.571倍

ライバルが勝つケース (賭け金90%)0.9 ÷ 0.6(支配率60%)=1.5倍

引き分けのケース (賭け金90%)0.9 ÷ 0.05(支配率5%)= 18倍

 

もうちょっとサンプル例に寄せて数字を決めてみる。

 

投票の分布(投票率

主人公  13.75%

ライバル 75%

引き分け 11.25%

 

これで、ライバル勝利と引き分けのオッズは例に等しくなる。

これは逆数で計算すると出せる。

0.9(掛け金)÷1.2倍(ライバルオッズ)=0.75(75%)

 

この例で行くと、主人公の配当は0.9÷0.1375で、6.54倍。

例文の8.5倍には少し足りない。

 

今回は引き分けを入れたからまだマシだ。

主人公の勝利、ライバルの勝利の2パターンだともっとひどいことになる。

 

ライバルの勝利が1.1倍、主人公が19.2倍!!

 

これくらい差をつけて、「ああ、人気がないんだな」と思わせたい作者の気持ちは、計算の前ではどうしようもない恥となる。

 

胴元の取り分がなかったと仮定しても(あり得ないが)

1.1倍は1(賞金)÷1.1(オッズ)=90.9%

となると、残りは9.1%。

1÷0.091=10.98倍

これ以上は主人公が勝った時には胴元の損となる。

 

ブックメーカー方式で、胴元が損を覚悟でオッズを決めたのだとすれば「5%の利益を目当てにオッズを決めた」となるが、いかんせんリスクが高い。

賭ける側も、たった10%の利益を取りにライバルの勝利に賭けていることになる。

 

ちょっと、胴元も、ライバルに賭ける観客も頭緩すぎませんかねえ。

で、なぜか主人公が「俺は俺に大金を張るぜ」ってなって一人で買って、誰も主人公に賭けていないっていう展開まで見える。

 

ハナから、賭博場の人間皆殺しにするほうが話は早そうだ。

普通に考えて「主人公以外の全員がライバルが勝つ」と思っているのなら、主人公君、このあと賭博場の皆から襲い掛かられますわね。

で、返り討ちにできるだけの武力を持っているのなら、

これ、合法というか合意に見せかけた「カツアゲ」じゃねーのってなる。

 

ま、創作なんで好きに書けばいいんだけど、逆数で割って、あれ、ってなる作品が案外多いんでこんな記事を作ってみた次第です。