創作世界のオッズ
小説とか、なんでもいい、架空世界の舞台。
闘技場とか、競馬とか。
ギャンブルが登場することってありますよね。
「主人公の勝利が8.5倍。
ライバルAの勝利が1.2倍。
引き分けが12倍となっています」
例えばこんな描写があったとする。
多分作者は、ギャンブルの仕組みをわかっていない。
というか
二つの違いもどうだっていい。
俺たちは雰囲気で小説を書いている。
ってな勢いがないと小説なんて書けないからな。
オッズの計算はそんな難しくない。
起こりうる事象A,B,C...の支配率と胴元のもうけの合計を100%にする。
ここでの支配率、ってのは投票した発券枚数が、全体の何割を占めているかってのを指す。
例に出した文で考えてみる。
まずは投票率(起きそうな確率に賭けられた割合)を適当決めてみよう。
- 主人公が勝つ 35%
- ライバルが勝つ 60%
- 引き分け 5%
主催者(胴元の取り分) 10%
こういう場合で計算をしてみよう。
全体に賭けられた掛け金から、胴元の取り分を差し引くと90%になる。
主人公が勝つケース (賭け金90%)0.9 ÷ 0.35(支配率35%)=2.571倍
ライバルが勝つケース (賭け金90%)0.9 ÷ 0.6(支配率60%)=1.5倍
引き分けのケース (賭け金90%)0.9 ÷ 0.05(支配率5%)= 18倍
もうちょっとサンプル例に寄せて数字を決めてみる。
投票の分布(投票率)
主人公 13.75%
ライバル 75%
引き分け 11.25%
これで、ライバル勝利と引き分けのオッズは例に等しくなる。
これは逆数で計算すると出せる。
0.9(掛け金)÷1.2倍(ライバルオッズ)=0.75(75%)
この例で行くと、主人公の配当は0.9÷0.1375で、6.54倍。
例文の8.5倍には少し足りない。
今回は引き分けを入れたからまだマシだ。
主人公の勝利、ライバルの勝利の2パターンだともっとひどいことになる。
ライバルの勝利が1.1倍、主人公が19.2倍!!
これくらい差をつけて、「ああ、人気がないんだな」と思わせたい作者の気持ちは、計算の前ではどうしようもない恥となる。
胴元の取り分がなかったと仮定しても(あり得ないが)
1.1倍は1(賞金)÷1.1(オッズ)=90.9%
となると、残りは9.1%。
1÷0.091=10.98倍
これ以上は主人公が勝った時には胴元の損となる。
ブックメーカー方式で、胴元が損を覚悟でオッズを決めたのだとすれば「5%の利益を目当てにオッズを決めた」となるが、いかんせんリスクが高い。
賭ける側も、たった10%の利益を取りにライバルの勝利に賭けていることになる。
ちょっと、胴元も、ライバルに賭ける観客も頭緩すぎませんかねえ。
で、なぜか主人公が「俺は俺に大金を張るぜ」ってなって一人で買って、誰も主人公に賭けていないっていう展開まで見える。
ハナから、賭博場の人間皆殺しにするほうが話は早そうだ。
普通に考えて「主人公以外の全員がライバルが勝つ」と思っているのなら、主人公君、このあと賭博場の皆から襲い掛かられますわね。
で、返り討ちにできるだけの武力を持っているのなら、
これ、合法というか合意に見せかけた「カツアゲ」じゃねーのってなる。
ま、創作なんで好きに書けばいいんだけど、逆数で割って、あれ、ってなる作品が案外多いんでこんな記事を作ってみた次第です。