「お金」ってそもそも何だ?――そんな根本的な問いを、ソシャゲの「課金石」と「ガチャ」に置き換えて社会制度を妄想したのが今回の話だ。
発想の出発点は単純で鋭い。「同一賃金」による共産主義的な平等はやる気を殺す。ならば「マウントを取りたい欲望」と「ガチャの偶然性」で火をつけるしかない。そうして編み出されたのが、ポイント(生活用)と石(チャンス用)を二重構造にした経済システムだ。
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ポイントは日常の食費・軽微な医療・労働の基本報酬に。
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石は高額商品・高度医療・社会的ポジションなど「運が絡むチャンス」に必要なリソース。
しかも石には「無料石」「課金石」があり、金持ちほど課税率が指数的に跳ね上がり、保有上限も厳しい。富裕層は“運”に頼らざるを得ない仕組みだ。
さらに面白いのは、社会全体を派閥に分けた点だ。
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「自由派閥」は競争好き。努力すれば石が増える。
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「平等派閥」は同一賃金の安心世界。
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「博愛派閥」は石やポイントの無償融通が可能。墓地ガチャのキャンペーンまで打つ。
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「アナーキスト」は抜け道や不正を暴くたび石を貰える、いわば社会公認のバグハンター。
派閥はスマートグラス越しに可視化され、「あの人は倫理派」「この人はカオス好き」と一目でわかる社会になる。
この仕組みを世界規模に広げると「統合ガヴァナー」とAIが登場し、派閥や地域ごとの石配分を調整。石が多い地域に金持ちが殺到しても「数か月滞在しないとロック解除できない」ため、結果的に地域経済が潤う。
医療もこのゲームに組み込まれる。風邪はポイント、臓器移植は「石20個」かもしれない。医師という職業自体も「石を稼げる仕事」と化す。
こうなると噂も飛び交う。「努力家には甘く、金持ちには厳しいガチャがあるらしい」「あの地域はAIのお気に入りだ」といった都市伝説。人々はそれを信じ、行動する。キャッチコピーは――
「Governer only knows」。
突き詰めればこれは、「富の抱え込みを制限し、チャンスをガチャで平等化する」という荒削りな実験だ。課題は山積みだが、もし導入できれば、格差社会に“運の再分配”という第三の解答を与えるかもしれない。
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