前回の議論で我々は、「犯罪収益を根こそぎ奪い、被害者を救済する」という、一見すると完璧な社会システム『国金』を夢想しました。
しかし、その話はここで終わりじゃなかった。むしろ、本当の地獄(あるいは天国?)の入り口は、ここからだったんです。
「そもそも、社会全体が逃げられない仕組みなら、刑務所って、いらなくない?」
この悪魔的な一言から、我々の思考は再び加速します。そう、物理的に隔離する必要なんてない。なぜなら、マイナンバー、国民総背番号制の銀行口座、そして国家が管理する電子決済システムによって、この社会そのものが**「脱出不可能な監獄」**と化すからです。
反乱を起こそうにも、ゲリラ活動をしようにも、まず腹が減る。そして飯を食うためには、国が管理する決済システムを使わねばならない。「お腹すいたんで自首します…」なんて、冗談みたいな光景が日常になる社会。
もはや「懲役20年」なんていう刑罰は時代遅れ。「賠償金5000万円の支払い」が終わるまで、国家の監視下で働き続ける。ただそれだけ。死刑も無期懲役もない、なんと人道的なんでしょう! その裏で「だって、労働力を閉じ込めておくなんてもったいないじゃないですか」という、血も涙もない合理主義が笑っているとも知らずに…。
そしてこのシステムは、究極の統治形態へと進化を遂げます。この国の指導者はどうやって決まるのか? 選挙はもちろんあります。ただし、ルールが一つだけ。「もし支持率が30%を切ったら、その指導者は『国民の信用を裏切った罪』で犯罪者となる」。
もうお分かりでしょう。政府は、国民を幸福にし続けなければ、今度は自分たちが「回収」される側に回る。国民は、犯罪のない安全な社会で、働き、消費し、遊び、満足する。反乱分子は飢えて自首してくる。警察は縮小され、刑務所は更地に。一見すると、どこにも問題がない。
自由? 安全? 平等? 全部クリアできてるじゃないか、と。
なのに、なぜだろう。この話を突き詰めれば突き詰めるほど、言いようのない「もどかしさ」と「違和感」が襲ってくる。まるで精巧な「だまし絵」を見せられているかのように、どこかに致命的な欠陥があるはずなのに、それが指摘できない。
『私たちはみんな「監獄に暮らしてるから」犯罪が無くって幸せなんです!』
もし国民が本気でそう言い出した時、我々はこの社会をユートピアと呼ぶのか、それともディストピアと呼ぶのか。さあ、あなたもこの底なし沼のような思考実験に付き合ってもらいましょうか。
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